【最長片道切符の旅#19】水郡線に乗車し奥久慈観光を満喫する
最長片道切符19日目。本日は2023年4月17日(月)。福島県の郡山駅から旅をスタートしていきます。
(最長片道切符の旅の概要はこちらからご覧ください)
この日の旅程は下記の通りです。
【旅程: 最長片道切符の旅19日目】
■ 郡山駅(9:18発)
↓ 水郡線 普通
■ 常陸大子駅(11:19着)
■ 大子観光(茨城県)
・昼食
・大子市街散策
● 大子駅前 (13:10発)
↓ 茨城交通
● 滝本 (13:21着)
・袋田の滝
● 滝本 (14:15発)
↓ 茨城交通
● 袋田駅前 (14:22着)
● 袋田駅 (14:27発)
↓ 水郡線 普通 (※最長片道切符不使用)
● 常陸大子駅 (14:33着)
・大子温泉
■ 常陸大子駅 (15:52発)
↓ 水郡線 普通
■ 水戸駅 (17:14着)
見る人が見ればお分かりいただけるかと思いますが、本日は水郡線やその沿線の旅となります。結果的に全線乗車することになりますが、そのうち最初の一駅間、郡山・安積永盛駅間はルート外の乗車となります。途中の常陸大子で途中下車をして茨城県の観光をしていきます。
【9:18発/11:19着】 水郡線で常陸大子へ
それでは郡山から旅をスタートしていきます。まずは水郡線の水戸行きへ乗車し、途中の常陸大子駅まで行きます。この水郡線、福島県内の区間は日中の本数が非常に少なく、時間帯によっては約4時間半列車が来ないことがあります。その点で、全区間を乗車しようとするとやや計画が立てにくいのが難点です。
列車は郡山を出発し、次は安積永盛駅。ここから最長片道切符のルートへ復帰します。厳密にはここまで東北本線の区間を走っていたことになります。ここから東北本線と分かれ、水郡線の単独区間へ入っていきます。
水郡線は「奥久慈清流ライン」という別称を持っており、文字通り、久慈川の清流を車窓から眺めることができます。とはいえ、清流が眺められるのは一部の区間で、それまでは田園風景と山を交互に繰り返していきます。
一方で、磐城石川駅や磐城棚倉駅などの周辺は市街地が広がります。
また、意外なことに水郡線の沿線には福島空港があります。石川郡玉川村と須賀川市に跨って位置する空港で、最寄駅は水郡線の泉郷駅です。とはいえ、水郡線の駅から空港連絡バスは出ておらず、公共交通機関でアクセスしようとすると、郡山駅発着でしか方法がありません。水郡線の本数が少ないですし、そもそもの空港利用者は少ないため(コロナ禍前の2019年度で28.2万人)、水郡線はアクセス路線としての役割は与えられていません。仮にアクセス路線として本数を増やすとしても、交換設備が取り払われた駅が多く、再度の設備投資が必要そうなので、採算的に難しそうです。
さて、列車は磐城棚倉駅へ到着。磐城棚倉からはかつて、白河までを結ぶ国鉄白棚線という路線がありました。1944年までは鉄道路線として運行されていましたが、戦争激化により不要不急線となったことからレール撤去へ至り、その後は休止状態のままが続いています。現在ではJRバス関東により、バスが運行されており、一部は線路跡の区間を専用道として活用しています。恐らくこれは現在のBRTの先駆けとなった事例かと思います。
東館駅を過ぎると、ようやく「奥久慈清流ライン」の愛称らしく、久慈川沿いに走り始めます。度々鉄橋渡るため、進行方向左側でも右側でも久慈川の流れを見ることができます。
矢祭山駅を過ぎると、福島県から茨城県へ入ります。さんざん駆けずり回った東北地方もこれでようやく走破。
ここからしばらくは本格的に関東地方を巡ることになりそうです。
県境を越え最初の駅、下野宮駅の次が目的地の駅、常陸大子です。常陸大子到着前には水郡線統括センターという車両基地や乗務員の拠点が置かれている水郡線の運行の要衝があります。今回はここ、常陸大子駅で途中下車をしていくことにします。
【11:19-15:52】 奥久慈しゃもに袋田の滝、大子で観光
郡山から乗車すること約2時間、常陸大子駅に到着です。この駅がある茨城県大子町は「奥久慈」といわれるエリアで水郡線沿線の中でも主要の観光スポットです。短時間ながら、奥久慈エリア内のハイライトをつまみ食いしながら観光していきます。
その前に、いつもであれば携行しているスーツケースをコインロッカーに預けるのが旅のルーティーンですが、常陸大子駅にはコインロッカーはありません。その代わりに、駅徒歩1分の「まちの研究室」という施設で、1個300円(平日10:00-17:00)で荷物を預かってもらえます。ただし、日曜は定休日であることと、土曜は13:00-16:00と短時間での利用に限られますのでご注意ください。本日は平日のため、昼前にスムーズに荷物を預けることができ、一安心。
それではいよいよ観光へ。まずはちょうどお昼時なので昼食へ出かけます。奥久慈といえば、やはり軍鶏(しゃも)、ということで、今回訪れたのが「弥満喜」さん。定番の親子丼はもちろん、しゃも鍋やしゃもすき鍋など、様々なしゃも料理が用意されています。今回は手軽に「奥久慈しゃも丼」(親子丼)を注文。「極み」というものもあり、こちらは内臓を含めた様々な部位が含まれます(筆者は内臓系が苦手なので普通の方をオーダー)。卵は朝採れの新鮮なものが使われています。
しゃも丼が着丼。サービスで気持ち多めにご飯を多く盛って頂いたようです。蓋付きのお椀に入った器をしゃも丼をオープンするとともに、黄金色の溶き卵と太陽のようにオレンジの黄身が輝きます。これは美味しそう。いざ実食。鶏肉の方はプリプリで弾力があり、卵は雑味がなく、溶き卵はフワフワです(当たり前ながらスーパーの卵とは段違い)。日常食である親子丼ですが、その上位互換を頂いた感覚です。そして、お膳には鶏ベースのスープや手作りこんにゃくの副菜も含まれています。こちらも美味しかったです。
奥久慈グルメを満喫した後は奥久慈屈指の観光スポット、袋田の滝へ、と言いたいところですが、駅から距離があるうえ、そこへ行くバスまで時間があるので、大子市街を観光していきます。大子の市街地はレトロな商店街があり、昭和の雰囲気が楽しめます。地方では駅前の商店街にシャッター街や廃墟があるのがお決まりですが、歩いた範囲では大子市街の商店街は「やっていけている」様子でした(「元気」というほどではないが)。
待ち時間が1時間以上である状態で巡っていたので、さすがにちょっと時間を持て余して駅へ。その間に、「袋田・大子周遊1日フリーパス」をスマホで購入。このチケットは大子、および袋田地区のバスが1日500円で利用し放題なのに加え、協賛店や施設における割引のサービスが受けられる特典がついているのです。
平日日中ということもあり、駅にはおばあちゃんの姿が目立ちます。知り合い同士で話すおばあちゃんの言葉は北関東らしい訛りがあり、ほのぼのとした空気感があります。駅前から袋田の滝方面へ向かう滝本行きのバスがようやく到着。袋田の滝までは約10分の道のりです。
終点の滝本バス停で下車。バス停から袋田の滝の入口までは歩くこと約10分です。途中、土産店や食事処があるので、ここで買い物や食事をすることも可能です。しばらく歩いていると、袋田の滝トンネルに差し掛かるので、ここで入場料を払ってトンネル内へ入ります。先述の「袋田・大子周遊1日フリーパス」があると、大人で通常300円の入場料が250円となります。
袋田の滝には2箇所観瀑する箇所があり、それぞれ第1観瀑台・第2観瀑台です。第1観瀑台は滝の下の方から滝の上の方を見上げる形になるため、高さ120m、幅73mに及ぶ滝の轟音が聞ける迫力のあるスポットです。第2観瀑台へは第1観瀑台付近からエレベーターでアクセスします。第2観瀑台は上の方から滝を見下ろすことができます。客観的な滝の大きさを確認することができ、改めてその規模を実感することができます。視点が違ってどちらも楽しいのですが、個人的には第1観瀑台の方が迫力が直接味わえて好きでした。茨城県の内陸に位置する袋田の滝ですが、意外なことに周辺は、約1500万年前はもともと海だったとのこと。海底火山の爆発により土地の隆起が生じたことにより、袋田の滝ができたようです。
袋田の滝周辺は山道を散策できるコースがあり、コースにより所要時間は違いますが、最短で10分、あるいは80分程度でハイキングを楽しめます。今回は時間の関係で立ち寄りませんでしたが、時間がある時は立ち寄っても良いかもしれません。
それでは帰りのバスの時間が近づいてきたので、滝本バス停よりバスに乗車して常陸大子駅へ戻ります。ただし、復路は袋田駅を経由。往路で乗車した常陸大子駅発着のバスだと袋田の滝で暇を持て余すことになったので、時間的のちょうどよい袋田駅行きのバスを利用しました。滝本から袋田駅まではたったの7分。バスと鉄道の接続は考慮されていたこともあり、袋田駅で鉄道とスムーズに接続。水郡線で再度、常陸大子駅へ戻りました。ちなみに、袋田駅は常陸大子から見ると水戸方に位置し、未乗の区間となりますが、最長片道切符のルートを逆にたどることになるため、通常通り乗車券を購入して乗車しています。また、袋田駅は簡易委託駅のため、時間帯によっては切符の販売があります。
常陸大子駅帰着時点で時刻は14:30過ぎ。次の列車まで約1時間20分ほど時間があるのでもう一箇所立ち寄りします。訪問先は「道の駅奥久慈だいご」。ここは温泉に入れる道の駅で、常陸大子駅から徒歩12分です。入浴の際、先述の袋田・大子周遊1日フリーパスを提示することで割引を受けられ、通常、大人500円の入場料が400円となります。肝心のお湯は大子温泉の源泉を引いたもので、泉質は硫酸塩泉。高血圧や高血糖に効果があるようです。浴槽は6人程度入ったらいっぱいになりそうなサイズ感でしたが、平日日中ということもあり、貸切状態でお湯を楽しむことができました。
道の駅に寄ったことでちょうどよい頃合いとなり、預けた荷物を回収し、常陸大子駅より移動を再開することとしました。
【15:52発/17:14着】 清流の車窓から都会らしくなる車窓を眺め水戸へ
常陸大子駅より水郡線での移動を再開。乗車するのは水戸行きの普通列車です。ホームに着いた時点では郡山始発の3両編成の列車が到着していましたが、ちょうど1両編成の列車が同じホームへ入線し増結。ここぞとばかりに、増結された車両に乗り込みます。福島県の区間とは異なり、常陸大子より水戸方は1-2時間に1本と運転本数が増え、この増結も相まって需要が増えることが垣間見えます。
4両編成となった列車は常陸大子駅を出発。次は袋田駅でこの区間は2度目の乗車となります。個人的に久慈川の車窓が見えやすいと思うのはこの区間。特に、左カーブの箇所で、進行方向左前側の線路の様子を見ると、右側には崖、左側は久慈川という位置関係となっていることがわかり、この区間の険しさを知ることができます。実際のところ、水郡線は2019年10月の東日本台風の際に被害を受けており、特に常陸大子・袋田間は橋梁が流されるなど被害が甚大で、この区間の復旧は2021年3月と、運転再開まで長い期間を要したことがあります。
袋田の滝の最寄り駅、袋田駅を過ぎた後も左右の車窓に久慈川が映り続けますが、特におすすめなのは下小川駅を出発した直後に見える進行方向左側の橋。欄干がない沈下橋で、「平山橋」といいます。沈下橋は一般的に、川が通常水位にあることを前提とした簡易的な造りとし、増水時に橋が流れても修復がしやすいというメリットがあります。この平山橋は床面がコンクリートで作られており、沈下橋としては頑丈そうですが、渡るときは少しスリルがありそうです。そういういわれからかは不明ですが、地元では沈下橋のことを「地獄橋」と呼んでいるようです。
久慈川の清流の車窓は山方宿駅付近で終了。それ以降は田園風景が中心となります。時刻は夕刻となっており、途中の常陸大宮駅からは多くの高校生が乗車してきました。
上菅谷駅の手前まで差し掛かると、進行方向左側から線路が合流してきます。これは分岐線の常陸太田方面からの線路です。水郡線の歴史ではこちらの支線の方が古く、実際は現在乗車している本線の方がカーブを描いて、支線の線路に合流をするような線形となっています。支線の終点である常陸太田駅は水郡線単独の駅の中では乗車人員が一番多く(2010年度)、常陸大子駅の約4倍となります。そのためか、水戸方からは常陸太田方面へ直接乗り入れる列車もある程度見られ、その分、水戸・上菅谷駅間の本数も増えます。
上菅谷駅を出発すると、あたりは水戸のベッドタウンのような様相となり、沿線の住宅が増えてきます。そして、駅間の間隔も狭くなることに、都会に入りつつあることを実感します。水戸方面からやってくるすれ違い列車には立ち客が大勢見られ、水郡線の水戸方ではまとまった需要があることが窺えます(水戸行きのこの列車も立ち客多数)。
最後の途中駅、常陸青柳駅をでて、那珂川を渡ると、終点の水戸駅に到着します。常磐線との合流地点はかなり水戸駅に近く、以前常磐線で水戸から仙台方面に向かった時に水郡線の存在を感じられなかった理由がわかりました。
それでは常陸大子から乗車すること、約1時間20分で終点の水戸に到着です。ここが本日の最終目的地となります。
【18:45-19:30】 茨城名物の納豆とそばを味わう
ホテルで荷物を整理して夕食へ。といえども、お昼に食べたしゃも丼がボリューミーでそこまでお腹も減っていなかったので、軽いものをと思い、お店を探していたところ、蕎麦居酒屋の「まち庵」さんがヒット。常陸秋そばを使った様々な種類の蕎麦があるのはもちろん、茨城の日本酒や一品料理もそろっています。
お腹が減っていないと言いながらも、やっぱり納豆は欠かせないと思い、頼んだのが「納豆オムレツ」のハーフサイズと「けんちんそば」です。そして、料理のお供に超辛口の「一人娘」を注文しました(あ、茨城の地酒のことです)。
一人娘は超辛口とはいえども、あまり辛口感はなく、口当たりはソフトでした。これはこれでおいしいです。続いて、納豆オムレツ。ハーフサイズではあるものの、思ったよりもボリューミーな見た目。オムレツの上にマヨネーズとねぎが乗っており、中身は納豆がぎっしり。ボリューミーな見た目とは裏腹に、卵がふんわりとしており、中の納豆が味にコクを加えてくれます。もう一皿食べたくなるおいしさでした。メインディッシュのけんちんそばは正直普通だったかなと(そばがゆで過ぎな感じがした)。それでも、野菜がたくさん入った優しい味で、ごま油のアクセントが特徴でした。
それでは本日の旅程はこれで以上です。
お疲れ様でした。
【おまけ】 ホテルがまさかの噂の場所だった
本日の宿泊先に驚いたので、おまけで掲載しておきます。
この日に限らず、宿泊先は予め押さえておくのが自分のやり方ですが、ホテル探しの条件としては「壁によって完全に仕切られた個室(=ふすまのみで部屋を仕切った民宿やアコーディオンカーテンだけで空間を仕切るカプセルホテルはNG)」「駅から徒歩圏内」「口コミの評価が悪くない」の3つを満たす中で、極力一番安いホテルを選ぶようにしています。計画段階で、水戸のホテルを予約しようとじゃらんで探し当てたのが「アーバンビジネスホテル」さん。水戸駅から徒歩10分で、部屋の写真や口コミを見た感じでは悪くなさそうだったので、ほぼこの情報だけで、このホテルを押さえることに。
当日、地図を見ながらホテルへ着くと何やら見覚えのある外観。この建物、知る人ぞ知る「令●納豆」というトンデモ飲食店がテナントとして入っていた建物だったのです(ことの経緯が気になる方はググってみてください)。これには仰天。とはいえ、ホテルとは直接の関係はないのですが、後々改めてGoogle Mapでのホテルのレビューを確認すると、このホテルも巻き添えを喰らう形で不当な評価を受けている様子。ただし、前々からこの「令●納豆」の経緯はある程度知っていたので、恐る恐る入館。
しかし、フロントの対応はいたってよくも悪くもなく普通。予めクレジット決済をしていたところ、フロントでも請求されかけましたが、こちらからの指摘でミスであることがわかると、何度もお詫びの言葉を頂きました。人によっては相当クリティカルになりうるミスですが、個人的にはこれにより不快な思いはしませんでした(前職の職種柄、気持ちがわかるので)。
肝心な部屋はいたって問題はなかったです。ビジネスホテルに定番の設備であるテレビ・冷蔵庫・湯沸し器・ドライヤー・ユニットバス・wifiは完備。多少の古さがあることを除けば、大手のビジネスホテルチェーンとそこまで遜色のない内容だったかと思います。価格は素泊まりで6,000円。ある程度規模のある県庁所在地の駅から徒歩10分の立地であることを考えると、値段相応のような気がします。また、コンビニは徒歩1分、無料の駐車場があります。
ちなみに、「令●納豆」の店舗だったスペースはほかの飲食店が入っており、いまでは静寂が戻っている雰囲気なので、その点においても、問題はないかと思います。ただし、一点だけ。宿泊料金の決済方法(事前決済or現地支払)はチェックイン前に把握しておきましょう(このホテルに限らず)。
【YouTube】