【最長片道切符の旅#38】スーパーおき号で山陰・山口を疾走も、大雨で遅延発生
最長片道切符の旅38日目。本日は2023年5月7日(日)。鳥取県の米子駅からスタートしていきます。
(最長片道切符の旅の概要はこちらからご覧ください)
【旅程: 最長片道切符の旅38日目(予定・定刻ベース)】
■ 米子駅 (6:00発)
↓ 山陰本線・山口線 特急スーパーおき1号
■ 津和野駅 (9:12着)
■ 津和野(島根)観光
・太鼓谷稲成神社
・津和野城跡
・津和野の町並み (殿町通り・本町通り)
■ 津和野駅 (13:15発)
↓ 山口線 特急スーパーおき3号
■ 新山口駅 (14:21着/16:10発)
↓ 山陽本線 普通
■ 宇部駅 (16:34着/16:45発)
↓ 宇部線 普通
■ 居能駅 (16:52着/17:02発)
↓ 小野田線 普通
■ 小野田駅 (17:27着/17:39発)
↓ 山陽本線 普通
■ 厚狭駅 (17:45着)
本日もかなりボリューミーな1日で、島根県を貫き、今度は山口県へ。山陽本線を取り巻く路線でちょこまか迂回しながら山口県山陽小野田市の厚狭駅まで移動していきます。
【6:00発/9:12着】特急スーパーおき号で津和野駅へ
本日の最初の列車は6時ちょうどの出発。最長片道切符の旅のルールでルート内の移動は6時から可能ということにしているため、ルールの範囲内では一番早い時刻の出発です。また、本日はGWの最終日ですが、早朝は混みにくく狙い目ということもあり、3日連続の6時台出発。このところ、日が増していくたびに寝起きの体が重くなっていくのを感じます。そんな体からの”声”的なものは無視して構わず旅を始めていきます。
本日一本目の列車は特急スーパーおき1号 新山口行き。山陰本線を西進していきます。車両はキハ187系気動車。見た目は地味ながら、高速走行・高出力が自慢の車両で、最高速度は120km/h、一部車両は設計上、130km/hが出せるポテンシャルのある車両です。
GWの最終日に伴うUターンラッシュが起こりやすい日ですが、まだ早朝、かつ、この列車の始発駅であるため、自由席を利用。米子駅出発時点では案の定、自由席車両には自分のほかにもう1名しか乗っていない状態で、ガラガラでした。
米子駅は山陰地区の重要な鉄道の要衝を担っている場所であり、山陰本線のほか、境線(米子-境港)、伯備線(倉敷-伯耆大山・米子)方面の列車が乗り入れるほか、後藤総合車両所の運用検修センターが構内にあり、現役の転車台と扇形機関庫が見られるのも特徴の一つです。
米子市の市街地を抜けると早速、次の安来駅までの間に県境を越えて島根県へ入っていきます。安来駅を出発後、次の荒島駅を通過してしばらくすると、車窓には中海が映ります。国内5番目の面積を誇る汽水湖です。その車窓はきれいではあるものの、比較的すぐに見えなくなってしまいます。その後は中海につながる大橋川が見えると、まもなく松江市の市街地へ入り、高架へ上がると松江駅へ到着します。言わずもがな、島根県の代表駅ですが、特に乗換路線はなく、構内は2面4線のホームのみで比較的すっきりした設備となっています。それでもきちんと駅ビルがあり、駅前には一畑百貨店という地元資本の百貨店も存在していました。当時は…。一畑百貨店は後の2024年1月に閉店してしまったのです。これにより、国内3番目の百貨店ゼロ県が誕生することとなってしまいました(先行している2県は山形県・徳島県)。しかし、それでも県庁所在地ということもあり、松江駅からは少しずつ他の乗客の姿も見え始めてきました。
松江駅を出発し、次の乃木駅を通過すると、有名な宍道湖が見えてきます。国内7番目の面積を誇る汽水湖です。先ほど見た大橋川・中海と接続しています。宍道湖はしじみの産地として有名で、漁獲量は国内第1位(2022年時点)。島根県の一つの産業を支えている場所です。一時的に宍道湖から離れると、次の停車駅、玉造温泉駅へ到着。その後も断続的に宍道湖の湖畔の車窓を見ながら次の停車駅、宍道駅へ向かいます。
宍道駅は有名なローカル線のひとつ、木次線(宍道-出雲横田-備後落合)との乗換駅です。この時はちょうど木次線のりばに奥出雲おろち号が停車中でした。奥出雲おろち号は車両の一部にトロッコ車両が連結された臨時観光列車。木次線は赤字ローカル線としても有名で、普段は閑散とした路線ではあるものの、島根県を代表する観光資源となって人気を博したものの、後の2023年11月に車両の老朽化により、運行終了となってしまいました。代替として、2024年4月から別の観光列車、「あめつち」が運行されるものの、車両性能の問題で線形が険しい末端区間には入れないようです。そのため、一部区間での運行になるとのこと。赤字ローカル線問題が顕在化しつつあるこの時代、特に閑散とした木次線の末端区間が寂れないことを祈りたいものです。
宍道駅を出発すると、宍道湖からは離れ、斐伊川を越えるとまもなく出雲市駅へ到着。特急やくも号や寝台特急サンライズ出雲号の終着駅です。JRの駅に隣接する形で、一畑電車の電鉄出雲市駅が設けられています。一畑電車は島根県の私鉄で、JRは宍道湖の南側を走るのに対し、一畑電車は宍道湖の北側を経由し、松江市内の松江しんじ湖温泉、または出雲市内の有名観光地、出雲大社を結ぶ路線網を保有しています。出雲市駅を出発して次の西出雲駅付近では後総合車両所出雲支所があります。ここを境に架線が途切れ、その先は非電化区間となります。先述のやくも号やサンライズ出雲号の終着駅が出雲市駅になるのは、「電車」の車両が充当されており、出雲市駅以西へ入れないという制約が関係しています。
その後、小田駅を通過すると、今度は日本海が間近に見えてきます。特に田儀駅付近は線路の直下が海だったり、高台から集落越しに海を見られたりなど、様々なアングルで日本海を眺めることができる山陰本線有数の絶景区間といっても過言ではないと思います。ただ、本日は曇天。灰色の雲の下に深緑色(?)の海が白波を立てていました。まあ、これもこれで日本海らしい風景だと思いますが…。その後は周りの地形が険しくなり、次の波根駅付近までは切り立った崖から海を眺める格好となります。
日本海から離れると、世界遺産の石見銀山の玄関口となる大田市駅へ到着。その後は時折、山間を抜けていきます。途中で通過する温泉津駅は「ゆのつ」と読む難読駅名のひとつ。文字から推測がつくように、温泉津温泉という温泉地が駅から徒歩圏内にあります。温泉津温泉は泉質の評価の高い共同浴場があったり、温泉地の町並みが江戸時代からの面影を残している点などで見どころが多い場所とのこと。そのこともあり、計画段階で、島根県内の観光訪問場所の一つの候補としていましたが、この列車は温泉津駅に止まらないため、訪問が厳しく、今回はそのまま素通りする結果となりました。
川幅のとても広い江の川(ごうのかわ)の河口を鉄橋で渡ると、次の停車駅、江津駅へ到着。かつては三江線(江津-三次)の起点駅となっていましたが、利用者僅少で2018年4月に廃止となっています。駅手前の分岐部をちらっとだけ見たものの、廃止から5年にして、だいぶ風化が進んでいる印象でした。先ほどの温泉津駅で待ち合わせた普通列車の遅れにより、江津駅を9分遅れで出発。その後はキハ187系のパワーをふんだんに発揮し、猛烈な勢いで走行する姿が見られました。
ところで、山陰本線の島根県域で見られる家屋は石州瓦を使った家屋が特徴的です。その色合いは鮮やかなオレンジから薄い茶色までバリエーションがあり、そのグラデーションを車窓から眺めていると、島根県に来た気分がしてきます。江津駅の次の駅、都野津駅周辺は石州瓦の発祥地といわれており、江津市周辺は特にその傾向を見ることができる印象です。
その後は益田駅まで、山間と日本海の車窓を行ったり来たりを繰り返していきます。その間、浜田駅・三保三隅駅に停車しつつも、カーブのある線形もなんのその、といわんばかりにほぼ終始に渡り、高速で飛ばしながら山陰を駆け抜けていきます。キハ187系が高速度・高出力であることは先ほどの通りですが、カーブにあわせて車体を傾斜する機能も搭載しているため、これにより高速度を維持して走ることが可能となっています。また、車両のみならず、線路側の整備が行われており、山陰本線においては鳥取・益田駅間において高速化工事が施工されていることもこの高速輸送に大きく貢献する要因となっています。
列車は益田駅へ到着。山陰本線は山口県の下関方面まで日本海を通る一方、スーパーおき号は益田駅から分岐する山口線へ入ります。益田駅からは日本海から離れ、山陽方面へ向かっていきます。益田駅は山陰本線沿線では島根県西端の市町村、益田市の中心駅。島根県東端の安来駅からは約2時間30分で島根県を駆け抜けてきました。この所要時間から島根県の長さを感じるものの、スーパーおき号はそれを凌駕するロングラン列車。今回は米子駅始発ですが、スーパーおき号には鳥取・新山口駅間を走る便が存在し、乗り通した場合の所要時間は約5時間10分~約5時間30分程度。距離は378.1kmです。気動車特急としては所要時間が一番長く、本州の在来線昼行特急列車としては最長の運行距離となります。
益田駅を出発すると、山陰本線から分岐。山口線の線路を走行していきます。この段階で自由席の窓側の9割が埋まっている様子でした。石見横田駅付近からは高津川に並行して日原駅へ停車。この付近から並行する川は津和野川に変わり、市街地が見えると津和野駅へ到着します。山口線のうち、新山口・津和野駅間には蒸気機関車を充当する臨時快速列車「SLやまぐち」号が運行されており、津和野駅手前(益田方)には現役の転車台を見ることができます。
【9:17-13:24】山陰の小京都、津和野を散策する
米子駅から乗車し続けること約3時間15分、定刻より5分遅れで津和野駅へ到着。ここで途中下車をしてしばし周辺を観光していきます。津和野駅は島根県津和野町の中心にある駅で、「山陰の小京都」と呼ばれる町並みをはじめとした観光スポットの多い町として有名な場所です。駅舎を出ると、天気は完全に雨模様に。米子駅出発時点では何とか持っていましたが、列車に乗っている途中でどうやら降りだしてしまったようです。昨日の広島に引き続き、2日連続の雨天での観光となります(そういえば今までは結構天候に恵まれていた方だったと実感)。
津和野駅前から早速、見どころがあり、それは蒸気機関車D51形194号機。通称「デゴイチ」で親しまれているこの車両は山口線で日常的に往来していた時代の最後の車両で、1973年までは現役で活躍していたそうです。現在は駅前広場で静態保存されており、夜間にはヘッドライトや機関室灯が灯されるようです。機関室に立ち入ることができ、そばには本物の石炭も展示されています。ほかに、駅前には安野光雅美術館や桑原史成写真美術館といった観光スポットもあります。
それでは駅を離れて、本格的に観光を開始。津和野のメインである街並みを一旦スルーして、中心部とは反対側、山の方向へ歩いていきます。駅から徒歩15分ほどで「太鼓谷稲成神社」の表参道入口へ到着。早速、参道を歩いていくと、連続で設けられた無数の鳥居。京都の伏見稲荷大社の千本鳥居を彷彿とさせる風景です。境内まで至る石段263段に沿って約1,000本が設けられているとのことなので、きっとこれも千本鳥居なのでしょう。鳥居のトンネルを歩いていると、境内の入口へ到着。鮮やかな朱色の神門をくぐると、そこが境内です。メインの建物である本殿もここにあります。この時、本殿ではちょうど御祈祷を行っているのか、笛と太鼓の音が聞こえて、神聖な雰囲気を醸し出していました。本殿の近くで聞いていると、太鼓の音の振動が体に伝わってくるくらいの迫力で、思わず聞き入ってしまいました。
さて、この太鼓谷稲成神社は津和野藩の7代藩主、亀井矩貞が1773年に、藩と領民の安寧を祈願して津和野城の城山に創建した神社。祭神である稲成大神は京都の伏見稲荷大社から勧請されてきたものらしいです。日本五大稲荷の一つと言われており、全国でも珍しく「稲成」と表記されます。過去の逸話から、盗難や失くしものがある時にこの神社に祈願すれば返ってこないものはないといわれて、それが九州の方まで伝播したことがあるのだとか。現在では山口線の開通で参拝者が増え、神社域が拡大して現在に至っています。
この時点では特に失くしものはなく、普段、失くしものはあまりしない一方、失くしたらシャレにならないもの(主にカギ)をごくたまになくすことがあり、手を合わせてそのご利益を先取りしてきたつもりです(効果があるかは不明)。
また、社殿が美しいのはもちろんですが、境内が見下ろす津和野の街もきれいです。山と山の間に並ぶオレンジの石州瓦の家々、そして、街に沿って流れる津和野川、山の中腹にかかる雲など、見応えのある景色でした。
今度は表参道と反対側にある裏参道から少し山を下って次のスポットへ行きます。それが「津和野城跡」です。太鼓谷稲成神社が存在する山の頂上にあり、さらに高いところ場所から津和野の街が見られるスポットです。また、城郭の建物そのものは存在しないものの、その石垣はほぼ完全な形で遺っているといわれています。頂上近くまでリフトが通っているので(徒歩でも登山可)、今回はリフトで登ろうとしていましたが…。
動いていませんでした。雨なので当然といえば当然ですね。遠目に係員の方はいらっしゃるようなので、完全な休業ではないのかもしれませんが、この状態でリフトに乗るものもお尻が濡れそうなので、今回は訪問を見送り。もう一度表参道を下り、町の中心部へ戻ることとしました。
ということで、津和野の中心部へ戻り、特に町並み(津和野伝統的建造物群保存地区)で有名な殿町通りと本町通りを見ていくことに。津和野の中心部は津和野城の城下町にあたるところで、江戸時代初期に整備された地割が現在も残っており、殿町通りは江戸時代に建造された武家屋敷の面影が残っているのが特徴です。白壁に石畳、黒い瓦屋根、そして蔵に設けられたなまこ壁。通りの建物のデザインが揃っていて美しいです。
殿町通りで特に目立つのは「藩校養老館」。藩校とは江戸時代に作られた武士としての素養を身につけるための教育機関のこと。具体的には、基礎の学問を身につけた14~15歳が入学をし、漢学や数学、武術などを学んでいました。現在でいう「中学校」みたいな感じでしょうか。現在はそのうち、槍術や剣術を学ぶ武術教場が2棟と御書物蔵などが残されています。藩校養老館からは様々な著名人を輩出してきましたが、特に有名なのは小説『舞姫』を記した軍医・文豪の森鴎外。また、日本の測量を行った伊能忠敬より前に蝦夷地(現・北海道)の測量をした堀田仁助という人物も輩出しており、実際に彼が測量して描いた地図が展示されていました。
また、殿町通りには1919年に建造された津和野町役場(津和野庁舎)も。表門もついており、言われなければ間違いなく外見からは役場と思えないほど、重厚な造りをしています。また、当時は工事中ではあったものの、武家屋敷の建物の中に混ざる形で、「津和野カトリック教会」もあるようで、こちらも見どころとなっています。
殿町通りの散策を終えた時点で時刻は11時30分の手前。天候のためか、周辺の観光客はまばら程度にしか見られませんが、一応混雑対策で、早めにお昼とすることに。駅からすぐ近くの「お食事処 みのや」さんへ立ち寄ることにしました。店内は空いていました。
こちらで頂いたのは津和野名物の「うずめ飯」。見た目はご飯に澄まし汁と刻みのりをかけているだけで質素感が漂いますが、ご飯を崩すと中からみじん切りの野菜やシイタケなど、様々な具材が出てきます。これには贅沢が禁じられた江戸時代に、役人の目をかいくぐるための仕掛けといわれています。まあ、それでも質素であることは変わりないものの、濃ゆい・こってりに走りがちなこの時代、逆にこのシンプルで素朴な味わいが体に沁みます。一緒に添えて出されたわさびが味変になるので、飽きずに楽しめました。ちなみに、入店時に出されたお茶は津和野名物の豆茶。小豆を液体にして飲んでいる感覚でこちらも美味しかったです。
もう少し時間があるので、昼食の後は本町通りへ。本町通りは商家や酒蔵が江戸時代から昭和時代にかけて集まった通りで、現在もその時代の面影が残って良い雰囲気を出しています。酒蔵は数店舗あり迷いましたが、今回は「古橋酒造」さんへ。「初陣」という日本酒を製造する酒蔵です。色々と試飲させてもらい、今回は「純米吟醸初陣」を購入。すっきりした味わいで飲みやすいように感じ、セレクトしました。今日のお風呂上がりにでも一杯やろうかと。夜が楽しみです。
この時点で列車までまだ時間があったものの、結局、雨は止むどころか強まってきたので、ここから先は何もしないことに。殿町通りと本町通りは一直線上にあり、その中間付近にある観光拠点「沙羅の木」の喫茶スペースでコーヒーブレイクとするにしました。ここではコーヒーと焼きアイスを注文。焼きアイスは2枚の焼き立てブリオッシュにアイスクリームを挟み込んだ一品。温・冷が融合した新食感がなかなか良かったです。しばしの間、観光地で何もしない贅沢な時間を過ごしました。
列車の時刻が近づいたところで、津和野散策はこれにて終了。終始天気は悪かったものの、GWとは思えないほど空いており、充実した時間を過ごせました。
【13:24発/15:01着】大雨で速度規制・大幅遅延!特急スーパーおき号で新山口へ
津和野駅から移動を再開。雨脚は津和野到着時に比べてかなり強まっている印象。次に乗車するのは特急スーパーおき3号 新山口行き。改札口の電光掲示板によると、5分遅れで運転中とのこと。さらには、山口線が大雨による徐行運転で大幅に遅れているという案内が改札に貼られているのを発見。これは一波乱あるかもしれません。
とりあえず、列車はほぼ案内通り、7分遅れで到着。今度は指定席で終点の新山口駅まで向かいます。指定席の車内はかなり埋まっている印象。というか、ほぼ全席抑えられていたはず。というのも、この列車の座席は本日、米子駅で最後2席しか空いていない状態で予約したものだから。今回予約したのは1人席。通常、スーパーおき号(キハ187系)の座席は通路を挟んで2席×2席の配置ですが、今回予約したのは車椅子利用者向けの座席。2日前からこの列車の座席を狙っていたものの、満席で取ることができず、ダメ元でもう一度、本日の朝、獲得を試みたところ、車いす用の1人用座席が2席空いているのを発見。すかさずその1席を押さえたという経緯です。恐らく、前日までは車いすの方向けに予約枠を残しておいて、空いていれば当日、一般向けにリリースしているのかもしれません。ちなみに、自由席はあるものの、立ち客が出るほど混み合っていました。
列車は9分遅れで津和野駅を出発。石州瓦の家屋が立ち並ぶ津和野の市街地を横目に進んだ後、早速トンネルへ入り、そこで県境を通過し、山口県へ入っていきます。途中、徳佐駅へ停車し、雨の中、田園地帯を進み、次の三谷駅へ到着。ここまでは順調だったのですが、しばらく停車した後にこんなアナウンスが。
「(大雨のため、)ただいま止まりました三谷駅から6つ駅の先(筆者注: 実際は5駅先)、宮野駅までの間、速度を落として運転いたします」(放送内容ママ)
「ついに来たかー」という感じですが、新山口駅では2時間近く待ち時間が生じる予定なので(この後、円滑に乗継をするため)、それを超えなければ個人的には痛くもかゆくもないという状況なので、まったくといいほど、焦燥感はない状況。一方で、新山口駅は新幹線との接続駅のため、よい塩梅で次の新幹線を予約していた方にとっては危機感を覚える状況だったと思われます。そんなところに、「新幹線との接続ができない可能性がある」という追い討ちをかける案内放送もありました。
その後、13分遅れで三谷駅を出発。徐行区間の計画が出された三谷・宮野駅間の距離は23.1km。計測したところ、25km/hでの走行だったので、この調子であれば1時間遅れくらいになるかと予想。車窓を見る限り、崖に景色を遮られることがあり、確かにそうなってもおかしくないなと思える区間を走行していました。
三谷駅から3駅先、篠目駅で対向のスーパーおき号とすれ違い。篠目駅を通過したところで、朗報が。
「この先、宮野駅まで速度を落として運転の予定でしたが、先ほどの篠目駅から所定の速度で運転を再開いたします」(放送内容ママ)
恐らく、対向のスーパーおき号がこの先の区間の線路状況を確認したのが理由か、途中で徐行が解除となりました。この時点で、列車は33分遅れとのこと。とはいえ、新幹線の接続は難しいことは確定です。
列車は山間を通過し、次の仁保駅を通過すると、次第に景色が開け、山口市の市街へ。当初の徐行解除地点となる宮野駅を通過してしばらく、次の停車駅、山口駅へ到着です。山口県の代表駅ではあるものの、駅は2面3線というコンパクトな構造となっています。実際に以前、乗り降りをしたことがありますが、駅の様子は代表駅とは思えず、駅舎の中には当時、観光案内所とみどりの窓口・売店のセブンイレブン・コインロッカー程度しかなかった記憶があります。しかし最近になってそのうち、みどりの窓口(みどりの券売機プラスに置換)・売店はなくなってしまったとのこと。実際のところ、全国の県庁所在地の代表駅の中では一番乗車人員が少ないというデータがあり、山口県内の乗車人員は13位とのことです(1位は下関駅、2位は新山口駅)。そんな山口駅付近は車窓からみる限りは目立つ商業ビルが見当たらず、中高層マンションがある程度なので、行政や商業の場というよりは生活の場としてまちづくりが進んでいる印象を感じました。
山口駅を出発してすぐに次の湯田温泉駅へ到着。徒歩10分~15分のところに湯田温泉があり、旅館・ホテルが集中している地区となります(山口駅近くにこれといったホテルはない)。以前に行ったことがあるのですが、山口市の市街地にあるため、温泉街らしい風情はないものの、恐らく全国的に見ても、県庁所在地の中心からここまで至近距離にある温泉地は珍しいのではないかと思います。
しばらく山口市内の市街地を走行した後、山陽本線へ合流して新山口駅へ到着。結局、40分遅れでの到着となりました。到着前の放送では特に新幹線との接続はなされないとのこと。Uターンラッシュ最中ということもあり、きっと接続できなかった乗客の方は後続の自由席で帰路に就く(場合によっては立ちで)ことになったのではと想像します。
新山口駅へ着くやいなや、ぞろぞろと多くの乗客が改札口へ向かい、ホームは一気に静かに。恐らく新幹線改札口やみどりの窓口はこれから戦場になることでしょう。これは自然が相手なので、乗客の方はもちろん、係員の方にも「ご愁傷様です」としか言いようがありません。
一通り、ホームで撮影を終えて、約1時間の待ち時間を過ごすために改札を出ると、やはり新幹線の改札口はかなり混雑している様子。駅ナカも混雑しており、そんな中、カフェで何とか席を取り、本日2回目のコーヒーブレイクをするのでした。
【16:10発/17:45着】 着きそうで着かない!山陽本線を迂回しながら厚狭駅へ
コーヒーブレイクを終え、移動再開です。次に乗車するのは山陽本線 下関行き。途中の宇部駅まで乗車します。車両は「末期色」こと、黄色一色の115系です。この時点でも雨は完全に本降りとなっており、風で雨が吹き込むのか、屋根があるホームにもところどころ水たまりができる始末です。
列車は定刻通りに新山口駅を出発。新山口駅出発後、少しの間、宇部線の線路が並行します。宇部線も山陽本線と同様、宇部駅へ行ける路線ですが、今回は山陽本線を利用していくことになります。宇部線の線路が離れていくと、田園地帯から山間部を走行。厚東駅付近からは厚東川に沿って走っていると、宇部駅へ到着です。宇部駅の2駅先が最終目的地の厚狭駅ですが、この2駅間を別の路線で迂回していくことになります。
宇部駅では先ほど少し並走した宇部線へ乗換。2駅先の居能駅を目指します。車両は105系電車。岡山・広島・山口県内の一部路線でしか見られなくなった車両です。塗装はまたもや黄色一色。この列車の行先は宇部新川行きですが、宇部市の中心は宇部駅付近ではなく、宇部新川駅にある関係か、車内の座席はほぼ埋まっている状況でした。
ものの8分で居能駅へ到着。居能駅では小野田線に乗り換えます。居能駅は2面2線の比較的小さな無人駅で、宇部方面からの宇部線の列車と小野田線方面の列車を乗り換えるときは跨線橋を渡る必要があります。しかし、その跨線橋は屋根がない簡易的な造りで、ザーザー降りの雨の中、ホーム間の移動を強いられることになりました。
約10分の待ち時間で、小野田線 小野田行きの列車が到着。車両は1両編成の123系電車。かつての手荷物や郵便輸送で使われた車両を改造したもので、全国のローカル線で運用に就いていたものの、現在は宇部線・小野田線のみでしか見られなくなった少し珍しい車両です。塗装はまたしても末期色、いや、真っ黄色。
列車は居能駅を出発すると、宇部線と分かれ、厚東川を渡って行きます。臨海部に近い場所であるため、橋梁走行時はなかなか開放感があります。しばらく走ると雀田駅へ到着。雀田駅の駅構造は1面2線ではあるものの、ホームは上から見ると台形のような形をしています。というのも、小野田線には本山支線と呼ばれる支線があり、雀田駅はその分岐駅のため。駅ホームで既に分岐が始まっており、分岐部の真ん中に駅舎があるという少し変わった構造になっています。本山支線は雀田・長門本山駅間の2駅、2.3kmを結ぶ短い路線で、列車本数はたったの3往復/日(朝2往復・夕方1往復)というなかなかの閑散路線です。
次の小野田港駅手前で臨海部に差し掛かり、周辺は工業地帯となります。さて、小野田港駅に着くと、運転士さんからの案内放送が。その内容はなんと「運転見合わせ」。大雨の影響で線路点検を行うためとのこと。終点の小野田駅では12分しか乗換時間がないのですが…(乗換が間に合わないと、移動可能時間の18時を過ぎてしまい、小野田駅から先の移動ができなくなるという状況)。
しばらくすると、「25km/hで終点の小野田駅まで徐行運転を行う」とのこと。その後、8分遅れで小野田港駅を出発。小野田港・小野田駅間は4駅・5.1km。小野田駅での乗換に間に合うか微妙なラインです。
次の南小野田駅からは臨海部から少しずつ離れ、山陽小野田市の市街地の縁を通りながら、終点の小野田駅へ向かってゆっくりと歩みを進めます。そして、山陽本線の線路へ再び合流すると、終点の小野田駅へ到着。向かい側の乗り場には乗車予定の山陽本線の下関行きが止まっていました。列車は12分遅れで何とか留まり(乗換列車の出発時刻と同時刻に到着)、無事に乗換を成功させることができました。
急いで乗換を済まして、次こそ最終目的地の厚狭駅へ。小野田駅は山陽本線の宇部駅・厚狭駅に挟まれた駅。つまり、山陽本線を辿ると宇部・小野田・厚狭の順となり、これら3駅は連続する駅であるものの、ここまで一駅間ずつ遠回りをしてきたことになります。焦らしてくれるものですね。
ということで、今回の乗車は1駅のみ。山陽新幹線の高架が見えると、ようやく本日の最終目的地、厚狭駅へ到着です。色々とあった一日でしたが、何とか計画通りに旅程をこなすことができました。
【18:00-】コスパが良いホテルに宿泊! しかし…
厚狭駅へ無事にたどり着き、本日の宿泊先、「Tabist厚狭ステーションホテル」さんへ到着。駅から徒歩2分でアクセス抜群です。この時は土砂降りの雨+強風という状況。急いでホテルへ駆け込みます。結論、こちらのホテルはかなりコスパが抜群でした。
今回はシングルルームデラックスを利用。受付を済まして宿泊する階にエレベーターで到着すると、客室のドアがピンク色になっており、一瞬ラブホかと思いましたが、客室に入った瞬間に、良い意味で裏切られました。部屋は広く、設備は作業用デスク・テレビ・ベッドといった基本的なものに加え、空気清浄機・ソファ・ローテーブルまで。しかも、テレビのVOD(大人のやつだけでなく、映画・バラエティなどもある)は無料、そして、作業用テーブルの近くにはコンセント4口、USBポート2口と充電環境も非常に良かったです。ベッド周りにもコンセントがあれば尚良しでしたが…。水回りは温水洗浄便座・洗面台・バスタブと標準的。ただし、バスタブの蛇口はきちんと温度調整用のハンドルが付いており、シャワーの湯加減に苦労しなくても良い点が嬉しかったです(たいてい安いホテルの場合、湯・水の2種類の蛇口がついているだけ)。
この内容でお値段は素泊まりでたったの5,800円(訪問当時)。お洒落さはないものの、機能性という点ではかなり優れているように思いました。尚、今回は朝食を利用しませんでしたが、朝食に関する良い口コミが多く、その点も恐らく期待できるポイントかと思われます。
さて、少し休んだ後は目星をつけていたお店に行こうとするも、あいにく休業。第2候補としていたお店も残念ながら休業。その後、周辺を少し歩いたものの、やっているお店が見当たらず、近くのローソンで買ったもので夕食を済ませることとなりました(これはこれで気楽だが)。そもそも、厚狭駅周辺の飲食店は少なめなので、その点は留意が必要なのかもしれません。
というわけで、本日に限らず、旅程がボリューミーだったGWはこれにて終了。ただそのおかげで、GW期間中に一気に九州に近づくことができました。世間は平日になりますが、こちらはもう少し旅を続けてゴールの新大村駅(長崎県)を目指していきます。
それでは本日はここまで。お疲れ様でした。
【参考】実績ベースの旅程
■ 米子駅 (6:00発)
↓ 山陰本線・山口線 特急スーパーおき1号
■ 津和野駅 (9:17着) ※5分遅れ
■ 津和野(島根)観光
・太鼓谷稲成神社
・津和野城跡 (→中止)
・津和野の町並み (殿町通り・本町通り)
■ 津和野駅 (13:24発) ※9分遅れ
↓ 山口線 特急スーパーおき3号
■ 新山口駅 (15:01着/16:10発) ※到着:40分遅れ
↓ 山陽本線 普通
■ 宇部駅 (16:34着/16:45発)
↓ 宇部線 普通
■ 居能駅 (16:52着/17:02発)
↓ 小野田線 普通
■ 小野田駅 (17:39着/17:40発) ※到着:12分遅れ・出発:1分遅れ
↓ 山陽本線 普通
■ 厚狭駅 (17:46着) ※1分遅れ
【YouTube】