【最長片道切符の旅#6】廃線迫る函館本線「山線」でドタバタとんでも非効率旅
2023年3月25日(土)。最長片道切符の旅6日目。本日は苫小牧から旅を再開していきます。この日の旅程ですが、訳ありとなっておりまして。。。
(最長片道切符の旅の概要はこちらからご覧ください)
まずは最初に考えた理想系の旅程を以下に示します。
【当初予定していた旅程: 最長片道切符の旅6日目】
◾️苫小牧駅(8:09)
↓ 千歳線 普通
◾️札幌駅(9:34)
◾️札幌(石狩エリア)観光
・北海道大学(9:50-11:20)
◾️札幌駅(11:48)
↓ 函館本線 快速エアポート111
◾️小樽駅(12:22/12:34)
↓ 函館本線 普通
◾️余市駅(13:01)
◾️余市(後志エリア)観光
・昼食
・ニッカウヰスキー余市蒸留所(14:00-15:20)
◾️余市駅(15:33)
↓ 函館本線 普通
◾️倶知安駅(16:32/16:55)
↓ 函館本線 普通
◾️長万部駅(18:32)
上記の旅程は恐らく無駄がないルートとなっていますが、事前準備の段階でやらかしが発生しました。
【自業自得】手配ミスで無駄な工程と早朝スタートが発生
話が数日前に遡ります。上記の旅程でも示したようにこの日は余市でウイスキーの蒸留所の工場見学を入れようとしていました。工場見学はツアー形式で事前予約が必須です。そのツアーは1回70分程度で、ほぼ30分おきに実施されるので、開始時刻の選択肢が多いです。とはいえども、余市駅を通る列車の本数には限りがあるので、参加できる時間は自ずと限られます。
余市駅を通る列車の時刻などから勘案して14:00開始のツアーを考えていたのですが、なんと数日前にツアーの予約漏れをしていたことに気づいたのです。手配漏れに気づき、あらかじめ想定した開始時刻のツアーに申し込もうとするも既に満員。
とはいえども、ここは諦めたくなく、こちらの訪問を中心に据えつつも、その先の旅程に可能な限り影響を及ばさないように新たに予定を組みなおしました。その結果、本来は苫小牧を8時過ぎの出発予定だったところ、6時のスタートとなり、同じ区間を行ったり来たりするかなり非効率な旅程となってしまいました。その全体旅程が以下の通りです。
【実行予定の旅程: 最長片道切符の旅6日目】
◾️苫小牧駅(6:00)
↓ 千歳線 普通
◾️札幌駅(7:07/7:14)
↓ 函館本線 普通
◾️小樽駅(8:01/8:06)
↓ 函館本線 普通
◾️余市駅(8:31)
◾️余市(後志エリア)観光
・ニッカウヰスキー余市蒸留所(9:00-10:20)
◾️余市駅(10:27)
↓ 函館本線 普通
◾️小樽駅(10:51/11:00)
↓ 函館本線 普通
◾️ 札幌駅(11:32)
◾️札幌(石狩エリア)観光
・北海道大学(11:50-13:00)
・昼食
◾️札幌駅(14:13)
↓ 函館本線 快速エアポート135
◾️小樽駅(14:46/15:05)
↓ 函館本線 普通
◾️倶知安駅(16:32/16:55)
↓ 函館本線 普通
◾️長万部駅(18:32)
見る人が見ればお気づきかと思いますが、札幌・余市間を3回も行ったり来たりしているのです。札幌から余市は1時間程度の所要時間となるので、どれだけ旅程に無駄が生じることかお分かり頂けることかと思います。まるで大股で反復横跳びを決めるような感じです。
「それであれば、札幌の観光飛ばしてしまえばいいのでは?」という声が聞こえてきそうですが、北海道内においては振興局ごとに分けたエリアに一カ所は必ず途中下車して観光するというルールを設けています。札幌は石狩エリア。しかも、一度このエリアを出たら近辺に戻ることはないので、無理やりこのタイミングでねじ込むしかなかったのです。
ちょっとアホらしい旅程ですが、これでやっていくことにします。
【6:00発/8:31着】 札幌圏を通過し、一気に余市へ
昨日の旅程終了が21時となってからの早朝6時出。眠たい目を何とか開けて苫小牧を出発です。苫小牧からは千歳線に乗車します。車両はクロスシートの721系。車窓が見やすいのでラッキーです。ただ、窓が汚いのが玉に瑕。
ちなみに、厳密には苫小牧から次の沼ノ端までは室蘭本線の区間。最長片道切符では岩見沢方面から沼ノ端まで室蘭本線をたどり、その後は千歳線で札幌方面へ向かうことになっています。しかし、昨日は宿泊と観光の兼ね合いで沼ノ端から一駅乗り越し、苫小牧まで来ていたという経緯です。そのため、沼ノ端から苫小牧まで別途往復乗車券を利用しました。
沼ノ端からはいよいよ千歳線へ入り、最長片道切符のルートに復帰します。途中の北広島では新球場をはじめとした複合施設、「北海道ボールパークFビレッジ」が開業したばかり。一瞬ではあるものの、北広島出発後、車窓左手に新球場の姿を見ることができました。
上野幌駅付近から景色は札幌の市街地の様相に。新札幌駅を過ぎると札幌圏の大動脈の一つ、函館本線が合流してきます。そして、苗穂駅手前では車窓右手に苗穂の車両基地が見えてきましたが、特に珍しい車両は見当たりませんでした。
列車は札幌へ到着。乗車した列車はここで終点のため、小樽行きの列車に乗り換えます。車両は731系の車両。ついにロングシートの車両に当たってしまいました。座れても、車窓の見にくいのが少しつらいです。
札幌・小樽間における車窓でおすすめなのは銭函・朝里間における日本海の景色。進行方向右手に一面の海が広がります。かつては北海道で日本海が望める路線がたくさんありましたが、廃線が相次ぎ、いまではこの区間と宗谷本線の抜海・南稚内間くらいになってしまいました。
線形の関係か、速度は非常に緩やかになるとそれは小樽駅到着の合図みたいなもの。終点の小樽に到着します。ここで倶知安行きの列車に乗り換えます。ここまでは電車でしたが、小樽より長万部方は非電化区間となるため、列車はディーゼルカーとなります。車両は比較的最近デビューしたH100形気動車です。新しいだけあって、外装も内装もきれいです。
列車は2両編成ですが、立ち客がたくさんおり、ローカル線にしてはかなり混雑しています。小樽を出発すると市街地を少し走ったのち、「山線」という呼称があるように、田園風景となっていきます。小樽では起伏が多い土地であることから、崖上に住宅が建っている様子が見られ、北海道では少し珍しいように思います。小樽から約30分、目的地の余市へ到着します。自分を含め、かなりの人数が余市で下車しました。
【9:00-10:20】 ニッカウヰスキー余市蒸留所を見学
列車は余市駅へ到着。余市では自分を含め数十人と大勢の乗客が下車していきました。
これから待ちに待ったウイスキー蒸留所の見学です。この無料の見学ツアーは工場見学と試飲ができるプログラムです。蒸留所は駅近で徒歩3分。駅で降りた方の中には蒸留所目当ての方も一定数いました。当然ながらドライバーはアルコール禁物なので列車利用が妥当でしょう。ローカル線の存廃問題が浮き彫りになる今日この頃ですが、この光景を見てお酒を飲ませる施設を沿線に作ることで多少は収支の足しにならないものかと妄想していました。
余談はさておき、余市蒸留所へ訪れる際は予約をしておかないと魅力が半減します。というのも、蒸留所への見学は予約必須で、予約がないと外観すら見られないからです。ミュージアムや直売所、レストランには予約なしで入れますが、余市に来るからには予約は必ず入れておきたいものです。
工場見学の際は正門で受付を済ませ、工場敷地の入構許可証を兼ねた試飲券を受け取ります。受付を済ませたら入って左手のビジターセンターで開始時刻まで待ちます。ビジターセンターで操業者に関する展示があり、この余市蒸留所を創業した人物として竹鶴政孝氏の紹介がありました。その苗字は銘柄の「竹鶴」にもなっています。
ツアーの開始時刻となり、ミュージカル並に声の通るガイドさんが案内をしてくれました。参加人数は土曜の9:00で2-30名くらいだったと記憶しています。まずは映像を見て余市蒸留所の概略を学びます。竹鶴氏はスコットランドでノウハウを学び、気候が最適な余市に工場を作ったそうです。設立は1934年。その際に工場の景観も、スコットランドに近いものになるようにこだわったようです。
また、ウイスキーづくりの工程は下記のように行われます。
【ウイスキーの製造工程】
① モルトの乾燥(工場内では行わず)
② 糖化
③ 発酵
④ 蒸留
⑤ 貯蔵・熟成
上記の工程ごとに工場の建屋が異なっており、この工程順になるように各建屋に案内頂けました。
まず、モルトの乾燥(上記①)を行う建屋は「キルン塔」という建物になります。正確には、現在ではこの建物は使われておらず、原料となる二条大麦は仕入れたうえで、工場内では仕込みから行っているようです。キルン塔は建物の歴史的価値の高さから建築物であることから現在もなお保存されています。
その次に別の場所に連れて行っていただき、糖化・発酵の工程(上記②③)に話が進みます。糖化とは原料の麦芽は粉砕され、それを温水につける工程のこと。これにより、麦汁ができます。この麦汁は麦茶に砂糖を入れたような味がするようであまりおいしくないようです。次にこの麦汁にオリジナルの酵母を投入し発酵をさせます。その際にアルコールが生じ、もろみができます。ここまではビールの工程とほとんど変わりがありません。そのため、ビールを作るメーカーはウイスキーに参入していることが多いのだとか。
そして、別の場所に映り、蒸留の工程(上記④)に話が進みます。先ほどの工程で生じたもろみはポットスチルという容器に移され、火入れされます。
火入れをする際は石炭を使い、800~1200℃の火を生じさせます。ちなみに石炭を使う蒸留所は世界中を探してもここだけなのだとか。この時に生じた蒸気を取り入れ、それを冷やして液体に戻します。これがウイスキーの原酒となります。蒸留・冷却の流れは2回繰り返すことで、アルコール度数を高めていきます。また、ポットスチルの形によってウイスキーの風味が変わるとのこと。ニッカウヰスキーには余市のほか、宮城峡にも蒸留所がありますが、それぞれ違った形のポットスチルを使っています。
そして、場所が移動し、貯蔵庫に進みます。原酒は樽に詰めて貯蔵庫で熟成されます(上記⑤)。ツアーで訪れるのは見学用のサンプルが置かれたところですが、本物通りに再現されており、大量の樽が整然と並べられています。貯蔵を行うと、蒸発が進み、30年ものの場合、半分の量になるようです。貯蔵されたものは千葉県の柏に運ばれ、ブレンドされた後に商品となります。
工場の敷地内には直接製造になくとも、歴史的に価値のある建造物がいくつか残されており、そこも簡単に案内を行っていただけます。
このような場所はツアーが終了したあとも、先述の試飲券があれば戻ってゆっくり見学が可能です。
(ただし、工場建屋には戻れません)
個人的に興味深かったのが創業当時の話。ニッカウヰスキーの前身は「大日本果汁」という会社でした。ウイスキーの原酒を作っても、商品化できるには時間がかかります。そのため、熟成するまでの間は地元の果物を使ったジュースを販売することで運転資金を確保していたようです。そして、ウイスキーの事業が安定したタイミングで大日本果汁を略した「NIKKA」(日果)に社名を変更したというエピソードです。
ツアーのクライマックスは試飲タイム。試飲はツアー客専用のフロアで行われます。試飲ででてきたのが「シングルモルト余市」「スーパーニッカ」「アップルワイン」でした。それぞれのおいしい飲み方まで教えて頂けて楽しい時間を過ごせました。試飲を行うフロアは時間が区切られており、長居はできないのでその点は注意が必要です。ツアーはここまでで所要時間は約70分です。
本当はもう少し直売所やミュージアムなど、ゆっくりしたかったところですが、列車の時間も迫ってましたので、工場敷地に再度入り、歴史的建造物を手早く見て余市を後にすることにしました。
宮城峡の醸造所でもツアーを行っているらしいので、そちらもいつか行ってみたいです。
【10:27発/11:32着】再度札幌へ戻る
余市での蒸留所見学を終えた後は行った道を再び戻り、札幌で途中下車します。もともとの計画では戻る予定はなかったので、本当に無駄な行程です。。。
【11:32着/14:13発】 北海道最大の都市、札幌の北海道大学で「学」に触れる
最長片道切符が始まって一番大きい都市、札幌に来ました。札幌は何度も来ていますが、今回は特に人が多すぎです。何かイベントがあるのかと勘繰るほどです。実際、札幌駅のコインロッカーが全然空いておらず、これには困ったものです。今回は北海道大学を旅行する予定だったので、その最寄り駅、北12条駅に一縷の望みをかけて歩きます。何とかそこで空いているコインロッカーを見つけました。重いスーツケースを引きずりながら観光など間違ってもやりたくないので(非公開の旅行なら観光を破棄するレベル)、本当に助かりました。
それでは荷物預かりが済んだところで、「北海道大学」を観光していきます。JR札幌駅からは徒歩7分、札幌市営地下鉄の北12条駅から徒歩4分のところに立地します。そもそも、「大学を観光ってどういうこと?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、北海道大学は大学の運営側も観光地として認めるほどの場所で、観光客向けのインフォメーションセンターも設けられています。
主に観光地として一般的に立ち寄りが推奨されているのが下記の場所になります。
今回はこの中の一部の場所のみ訪問をしていきました。
【北海道大学の代表的な名所・施設】
① インフォーメーションセンター「エルムの森」
② 総合博物館
③ 札幌農学校第2農場
④ 植物園
⑤ ポプラ並木
⑥ 平成ポプラ並木
⑦ イチョウ並木
⑧ 大野池
⑨ クラーク像
⑩ 古河講堂 (外観見学のみ可)
※その他、図書館、文書館、食堂、グッズショップなどがある。
まず訪れたのは「ポプラ並木」(上記⑤)。恐らく100m以上はあるであろう道の両端に背の高いポプラの木が植えられています。頭の中に久石譲の「風の通り道」の曲が流れます(歌詞の中に登場する木はニレの木ですが)。3月の時期のため、緑の気配は全くありませんが、夏季に見てみるとまた違った景色が見られそうです。
続いて向かったのが、「総合博物館」(上記②)。こちらには北海道大学の開設経緯やリベラルな教育方針を確立するまでの過程、各学部ごとの研究の成果などが惜しみなく公開されている場所です。資料の量がえげつなくボリューミーで、北海道大学の知の結晶を感じることができます。恐らくくまなく、資料を丁寧に見ていけば、まる1日費やすことになりそうです。正直なところ、少しだけ見ていこうという軽い気持ちでよっていきましたが、飛び石で興味があるところだけつまみ食いをしていっても、30分かかりました。正直なところ、資料のボリュームに圧倒されてあまり内容が入ってこなかったので、次回は1時間-2時間まとまった時間をとってゆっくり見ていこうと思います。
そして、外せない、かつ有名なスポット。それが「クラーク像」(上記⑨)。「少年よ、大志を抱け」で有名なあのクラーク博士の像が構内にあります。そもそも、クラーク博士は明治時代に西洋の教育を日本に取り入れる過程で、アメリカから日本へ招聘され、北海道大学の前身、札幌農学校の教頭となった人物です。「少年よ、大志を抱け」という言葉は以下のニュアンスがあるようです。
“金銭や我欲のためにではなく、また人呼んで名声という空しいもののためであってはならない。人間として当然そなえていなければならぬあらゆることを成しとげるために大志をもて。”
自分もその言葉、肝に銘じないといけません。
上記の3箇所に古河講堂の計4箇所を巡った時点でタイムアップ。先ほどのコインロッカー問題で時間を取られてしまい、思ったように構内を周遊ができませんでした。
この時点で13時15分頃。時刻は札幌の出発まであと1時間弱。「札幌に来たからにはスープカレーが食べたい」ということで、北海道大学付近で目星をつけていたお店にいくも並んでいる様子。もう一つの候補のお店に行ってみるも、先ほどの店舗以上に行列が。ということで、潔く諦め早めに札幌駅へ向かうことにしました。
とりあえず、名物とかを抜きにして何か食べられればそれでよいというスタンスで札幌駅に来たものの、駅地下のマックも蕎麦屋さんも激混み。これぞ都会の洗礼。断食を覚悟して仕方なく改札内へ入ります。すると、蕎麦屋さんを発見。そこでは席が空いており、何とか食にありつくことができました。そのお店では道内の幌加内産のそばを使用しており、少しは北海道気分を味わうことができました。
大きなミスというほどではないものの、今回の札幌観光は残念ながら全体的にドタバタ・グダグダになってしまいました。
【14:13発/18:32着】 新幹線開業で廃止が運命づけられた「山線」で長万部へ
それでは小樽行きの普通列車で札幌を出発。車両はクロスシートの721系。先ほどはロングシートだったので、あまり楽しめなかった景色を楽しみます。苫小牧から乗車した列車と同形式で、やはり窓は汚かったのが残念。小樽へ到着したあとは乗り換えて、倶知安行きの普通列車へ乗車します。H100形気動車の2両編成でしたが、クロスシートの箇所は陣取ることができず、多少のロングシートの部分は空いていたものの、景色が見られそうもなかったので立って乗車することにしました。余市である程度の人数が降りたものの、依然としてボックス席は取れそうもなく、結論、終着の倶知安まで立って乗車することになりました。
札幌から函館本線の小樽を経由して長万部へ至る経路は通称「山線」と呼ばれ、「海線」と呼ばれる札幌から苫小牧・室蘭本線を経由して長万部へ至るルートと対をなします。もともとは札幌・函館間の特急列車は山線を通っていましたが、山越えが多く線形も悪かった所要時間も頭打ちとならざるを得ませんでした。そのため、海線の区間ができると、沿線人口がそちらの方が多いのも相まって特急街道は海線の方へ。これにより、山線の方はローカル線と没落をしてしまいました。基本的に山線は単線であるものの、ほとんどの駅に交換設備が設けられており、かつてはそれだけの本数が走っていたことを垣間見ることができます。
さて、列車は倶知安止まりなので、倶知安で乗換えをしていきます。さすがに立ちっぱなしで足が疲れてきたところ。今度は座るべく乗車口に並んでいましたが、列車の停止位置でないところに並んでしまっており、また席の獲得に失敗します。車両は同じくH100形気動車ですが、今度は1両編成。
乗客は倶知安での下車客も見られた一方、山線を走破する予定の乗客も多く、席の争奪戦の難易度はやや高めです。
ということで、全区間立つことを覚悟し、倶知安駅を出発します。
倶知安・長万部間で必ず見ておきたい車窓は下記の3箇所です。
【函館本線山線おすすめの車窓(倶知安-長万部)】
① 羊蹄山 (倶知安-比羅夫: 進行方向左側)
② ニセコアンヌプリ (倶知安-ニセコ: 進行方向右側)
③ 蕨岱駅跡 (黒松内-二股: 進行方向左側 ※鉄道ファン向け)
やはり山線の車窓のハイライトは倶知安駅からニセコ駅付近に集中しています。というのも、上記①②の通り、左右両側に有名な山が見られるからです。そのため、倶知安駅付近では寝ないように努めましょう。
鉄道ファン向けのおすすめスポットは上記③の蕨岱駅跡です。蕨岱駅は2017年3月まで営業していましたが、利用者僅少のため、廃止となってしまいました。駅名の読みは「わらびたい」。全国のJR線の駅名を五十音順に並べると一番最後になる駅で、巷では有名(?)でした。外は暗くなりつつなる中、一瞬で過ぎ去る駅跡を確認。恐らく電気設備と思われるものを除き、跡形もなく設備は撤去されているようでした。
ところで、倶知安・長万部間においては1駅間が長いのが特徴(1駅10km前後の箇所が多い)。駅間を走るごとに何かしらの山を越えている印象があり、この路線の過酷さを思い知ることとなりました。こういった土地を走るためか、乗客の流動はやや少なく、ニセコでは多少の乗車・下車があった程度。ニセコからの乗客の中には外国人の方も。午前中に余市まで行った際も外国人観光客が一定数乗車しており、コロナ禍を経験したこのご時世においても世界の人々を惹きつけるニセコブランドの絶大さを垣間見ました。
小樽から出発すること、約3時間半が経過し、結局立ちっぱなし(多少の空きはあったが、車窓を楽しむために意地になっていただけ)のまま終点の長万部に到着。本日の最終目的地はここです。
昭和の下宿のような宿、「長万部温泉ホテル」に宿泊
本日の宿泊は「長万部温泉ホテル」さん。普段ここまで宿泊場所のことを紹介しませんが、なかなかユニークなところなので、詳しく紹介します。長万部温泉ホテルは長万部温泉の温泉街に位置します。ギリギリ徒歩圏内なので駅から歩いて行きます。駅から徒歩15分。最近までは温泉街へのショートカットとなる人道橋がありましたが、北海道新幹線の整備のため、取り払われてしまい、徒歩でのアクセスが幾分不便になりました。疲労が溜まった足に鞭を打ちつつ重い荷物を持ってホテルへ行きます。周辺にやっている飲食店があるか甚だ怪しかったので、道中セブンイレブンで北海道限定のカップ焼きそば、「焼きそば弁当」を調達します。そのホテルは夕食の豪華さで有名ではありましたが、費用をケチる、いや、節約のためと、長万部名物で、宿での食事のメインである毛ガニが苦手だったので素泊まりで予約をしていたのです。
暗い道を歩きようやく、ホテルにチェックイン。名前にホテルと付くので、ここまで「ホテル」「ホテル」と記載していましたが、いわゆるほとんどの人がイメージするホテルとは程遠いのが特徴です。部屋は個室となっているものの、飾りっ気のない古い木製の扉を開けるとそこには8畳の和室だけの素朴な空間(12畳の部屋もある)。トイレや洗面台はなく、水回りは共用です。部屋や共用部の雰囲気から、まるで有名漫画家の下積み時代の下宿に迷い込んだのかと錯覚します。ただし、「ボロい」というよりかは良い意味の「レトロ」さがあり、各設備はきちんと手入れされている印象があります。部屋はもちろん、共用の水回りもきれいでした。意外と部屋にはwi-fiが通じており、これについては意外と時代にキャッチアップをしているようでした。また、女将さんが親切。丁寧に部屋や設備の案内をしていただき、翌日の駅までの送迎を自ら申し出ていただきました。
長万部温泉ホテルのハイライトはやはり温泉。大浴場と家族風呂の選択が可能です。大浴場は21時まで、家族風呂は24時間利用可能です。大浴場は日帰り客と共同で利用します。昔ながらの番台が残っており、脱衣所には筆文字で勢いよく書かれた効能と禁忌症。なぜか真ん中には海の家に設置されていそうな椅子とテーブルのセットがあり、ちょっとカオスな雰囲気があります。肝心の風呂は源泉掛け流しの正真正銘本物の塩化物泉。色は黄色がかっており、多少の塩素らしき臭い(消毒ではなく天然物としての臭い)があります。温度はやや暑めでした。シャワーは固定されており、カランも独特な形をしており、常に驚きの連続。どこもかしこもレトロすぎて逆に新鮮でした。
結論、好きな人は好きでしょうし、嫌いな人は嫌いだと思います。レトロ好きな人には間違いなくお勧めの旅館。
長万部温泉にはほかにもこういったレトロな旅館が多くあり、一度足を運んでみてほしい隠れた温泉地です。
それでは本日はこれで終了となります。長い旅程、本日もお疲れ様でした。
【YouTube: 最長片道切符の旅6日目】