【最長片道切符の旅#4】北海道の大地を五感で楽しむ釧網本線の旅(後編)・根室本線の旅

最長片道切符の旅4日目。本日は2023年3月23日(木)。本日は北海道弟子屈町の川湯温泉から旅を始めて行きます。
(超遠回り全国鉄道旅行・最長片道切符の旅の概要はこちらをご覧ください)
本日の旅程は以下の通りとなります。

【旅程: 最長片道切符の旅4日目(予定時点)】
■ 川湯温泉街(郵便局前BS) (8:02)
↓ 阿寒バス
■ 川湯温泉駅(8:10着/8:18発)
↓ 釧網本線 普通
■ 釧路駅(10:00着/10:25発)
↓ 根室本線 普通
■ 池田駅(12:33着)
■ 池田(十勝エリア)観光
 ● 池田ワイン城(12:50-14:30)
■ 池田駅(15:07発)
↓ 根室本線 特急おおぞら
■ 新得駅(15:54着/16:21発)
↓ 根室本線 代行バス
■ 東鹿越駅(17:29着/17:42発)
↓ 根室本線 普通
■ 富良野駅(18:22着)

【8:02発】 川湯温泉街を出発

お世話になった「KKRかわゆ」さんを出発して、川湯温泉駅行きのバスへ乗ります。往路と同じく、温泉街から駅まで約10分です。

KKRかわゆはコスパに優れており一人旅にはおすすめの旅館です。部屋の写真などは前日の記事に掲載しておりますので、そちらをご覧ください。温泉は源泉掛け流し。良い湯なので、昨晩にとどまらず、どさくさに紛れて朝湯もしておりました。

【8:18発/10:00着】釧網本線で釧路湿原を眺めながら釧路へ

バスで川湯温泉駅へ到着。川湯温泉駅から釧路行きの釧網本線で釧路へ向かいます。

川湯温泉駅は無人駅ではありますが、駅舎は貫禄のある山小屋風の造りとなっています。川湯温泉駅には天皇陛下のための貴賓室がかつて設けられており、現在はそのスペースを利用して喫茶店の営業が行われています。そして、やはり温泉駅ならではの足湯が設けられています。川湯温泉の温泉街のお湯が強酸性の硫黄泉であるのに対し、この足湯は中性の炭酸水素塩泉となっています。

川湯温泉駅駅舎
川湯温泉駅の駅舎

バスが駅に入った時点で既に釧路行きの列車は駅に着いていた模様。対向列車待ち合わせをしていたようです。対向列車の待ち合わせを終え、列車は川湯温泉駅を出発します。

キハ54系気動車
キハ54系気動車

前日も網走から乗車していた釧網本線。川湯温泉より釧路方面でも車窓の見どころがいくつかあります。挙げると以下の通りです。

【釧網本線の車窓見どころ(川湯温泉・釧路間)】
① タンチョウがやってくる茅沼駅(主に進行方向右側)
② シラルトロ沼と塘路湖(茅沼-塘路: 進行方向左側)
③ 人工物がほとんどない釧路湿原と釧路川(塘路-遠矢: 主に進行方向右側)
④ 釧路市街を流れる釧路川(東釧路-釧路: 進行方向両側)

上記①の茅沼駅は運がよければ丹頂鶴を見ることができます。基本的にはホームの向かい側にいることが多い印象です。残念ながら今回は見つけることができませんでした。

上記②の湖沼については最初に見えるシラルトロ湖の方が間近で見られます。次に見える塘路湖は道路を挟むのでシラルトロ湖と比較すると若干引いた位置から見ることとなります。

そして、上記③の釧路湿原は釧網本線を代表する車窓といえるでしょう。進行方向右手には釧路川がら流れており、その向こうにはだだっ広い湿原が広がり、人工物を確認するのが難しいほど。毎回通る度に「よくこんなところに線路を通したもんだ」と思わざるを得ません。

丹頂鶴の来る茅沼駅
丹頂鶴の来る茅沼駅
シラルトロ沼
シラルトロ沼
釧路湿原と釧路川
釧路湿原と釧路川
釧路市街を流れる釧路川
釧路市街を流れる釧路川

この日、朝の時間帯は全体的に霧がかっており、視界はよくなかったものの、それはそれで幻想的な景色が広がるので天候ごとに違った風景が楽しめると思います。

以上のように、観光スポットが沿線に多く車窓もよいことから平日でありながらも、観光客と思わしき乗客が多く乗車していました。また、地元の方の乗車も一定数あったため、標茶以降ではほぼ満席になっていたように思います。

川湯温泉から釧路までは約1時間40分。車窓がよいので飽きることなく乗車できました。

【10:25発/12:33着】釧路荒涼・十勝は畑、普通列車でのんびり池田へ

釧路へ到着。釧路からは根室本線の普通列車に乗車して池田へ向かいます。ここから先は特急列車も走っていますが、待ち時間が1時間以上になるうえ、池田までは普通列車が先行するため、今回は普通列車を使っていきます。
(一番の大きな理由は特急料金をケチりたかったということですが)

釧路駅
釧路駅

今回下車する池田までは大きく下記3箇所の見どころがあります。

【根室本線の車窓の見どころ(釧路-池田)】
① 新釧路川と日本製紙旧釧路工場の赤白の煙突(釧路-新富士: 進行方向右側)
② 馬主来(ぱしくる)沼とその周囲の湿原(白糠-音別: 主に進行方向左側)
③ 太平洋(白糠-厚内で断続的: 進行方向左側)

上記①については恐らく見られる時期が限られそうな車窓。2021年8月まで釧路の産業を象徴する日本製紙の釧路工場がありましたが、同年9月に操業が停止となりました。釧路工場には赤白のボーダーの煙突が操業停止後も残されていますが、将来、工場跡地がサケの陸上養殖試験場に活用される見通しがたっています。そのため、恐らくやがては解体されるのではと予想しています。

上記②については音別の少し先、古瀬信号場(旧古瀬駅)を通過し、馬主来峠を通過したのちに山を下り、景色が開けたところにだだっ広い湿原が見えてきます。また、周囲には馬主来沼があります。この馬主来沼は太平洋に近接しており、水位によって太平洋との境目がなくなり一体になることがある珍しい沼です。

上記③が一番メインとなる車窓でしょう。先ほどの馬主来沼を通過してすぐに太平洋が見えてきます。その後も厚内駅手前まで断続的に海景色を望めます。残念ながらこの時は曇天で視界が良くなく地平線と雲の境界すらもよくわかりませんでした。

旧日本製紙釧路工場の煙突
旧日本製紙釧路工場の煙突
馬主来湿原
馬主来湿原
太平洋
太平洋

もう一点番外ではありますが、厚内・浦幌間の山越えを終えると釧路管内から十勝管内に移ります。十勝管内に入ってからは十勝平野の広大な畑の中を通ります。ちなみに十勝の食料自給率は1,170%(2022年)という驚異の値を記録しており、我々もこの大地からの恵みを物流を通して享受していることと思います。

十勝平野の畑
十勝平野の畑

浦幌からも引き続き、十勝の畑を見ながら乗車することしばらく、途中下車をする池田駅に着きます。

乗車した普通列車はここで釧路を約1時間後に出発した特急列車に抜かされます。道中、対向列車の待ち合わせが多いうえ、速度もそこまで速くないため、特急とのスピードの差が顕著に表れます。

池田駅
池田駅

【12:50-14:30】ワインの里、池田でワイン城を見学

池田駅で列車を下車。ここは池田町の中心駅。池田町はワインの生産地として有名です。それを象徴する観光地、「池田ワイン城」(正式名称は「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」)に訪問します。

池田ワイン城は池田町の名産、十勝ワインを製造するところ。物産をはじめ、レストランがあったり、工場見学などができます。酒飲みである筆者としては見逃せないスポットです。
(ワインはあまり飲まないのですが)

池田駅は駅事務室で荷物預かりのサービスがあるので、ここぞとばかりに利用させてもらいます。
(荷物預かりは1個430円 ※2023年3月現在)

さすがは町を代表するスポットだけあり、しっかりと道案内の表示があり、迷いようもないほどです。Google Mapで調べると徒歩20分程度とでてきますが、案内されたルートで行くと、徒歩10分程度で着きます。ワイン城の建物は宮殿みたいで遠くから見ても目立ちます。

池田ワイン城(池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)
池田ワイン城(池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)

ワイン城は地上4F建て・地下2F建ての建物。そのうち、B1F・B2F部分が工場見学コーナーです。駅側からの入口はB1Fにありますが、順路案内がなく迷いました。展示内容を見た感じでは一旦、B1Fの奥の方へ行ってからB2Fへ下っていくと概論(?)から順に掘り下げて理解ができるかと思います。B2Fには熟成室があり、樽に入ったワインが無数に並べられています。また、同じ階の端の方には1963年以来、年ごとに保存された瓶詰めのワインがあります。これは販売用でなく、試験研究用のようです。瓶にはカビが生えており、それだけの年数の厚みを感じます。いったいどんな味がするのか怖いもの見たさで確かめたくなる気もします。

ワインの樽
ワインの樽

1Fには十勝ワインが販売されています。同じフロアには有料で試飲コーナーがあります。つい磁石のN極とS極のごとく吸い寄せられかけましたが、後で楽しむのでいまは我慢。ワインに限らず、十勝の名産物なども売られており、よだれものです。

4Fはレストランになっており、ここが自分にとってメインディッシュとなる場所。このために来たといっても過言ではありません。レストランはかなりの席数がありますが、外の展望が効く席を選択。外は霧になっていますが、これもこれで美しいものです。やはりワインがテーマになっているので、フードのラインナップは洋食メインです。今回は赤ワイン3種類のお試しセットと十勝牛のハンバーグを注文。

ワインのお試しセットはワイングラスに4分の1ずつ入った各銘柄、「清見」「清舞」「山幸」の3種類が運ばれてきます。それぞれ微妙に違う気がしますが、普段あまりワインを飲まない筆者としてはなんとも明確に味を表すことができないのがもどかしい。。。味も微妙に違って、最終的に自分の好みのものが見つけられました。

そこで、ハンバーグがきたタイミングで、調子に乗って自分好みの「清見」を追加オーダー。ハンバーグは肉そのものももちろんですが、ソースが特に美味しい。このソースにも十勝ワインが使われているのでしょうか。ハンバーグという食べ物自体は日常食ですが、こんなに贅沢な気分になれるのかと幸せになります。

十勝牛のハンバーグ
十勝牛のハンバーグ

ほろ酔いになったところで、ワイン城の建物以外にも、一部の工場が見学できるので、最後にそこも回ります。ワインの瓶詰めのラインがそのまま見ることができ、興味深いです。

この内容で、一連の施設の入館については無料です。これはなかなか良心的です。それではこの辺でそろそろ駅へ戻ります。

【15:07発/15:54着】 特急おおぞら号で新得へ

預かってもらった荷物を回収して、今度は特急おおぞら号で新得へ向かいます。短時間の乗車なので、自由席を利用。平日の日中でしたが、窓側の半分程度が埋まっている印象でした。

特急「おおぞら」号のキハ261系気動車
特急「おおぞら」号のキハ261系気動車

当たり前ですが、やはり特急列車は早く爽快感があります。3日ぶりの特急のため、ありがたみがあります。

まもなくすると、車掌さんが切符確認に。こぼれ話ではありますが、最長片道切符は「出札補充券」(いわゆる裏面が白い切符のこと)と呼ばれるやや特殊な切符を使います。券面の欄に経由地を書く箇所があるものの、書ききれないため、券面には「別紙参照」と記入したうえで、びっしりと路線名や経由地が別紙をホチキスで留めてセットとしています。駅員・車掌さんなど、これを見た時の係員さんの対応は結構それぞれで、ちょっと戸惑って確認に時間をかける方や顔色一つ変えず冷静に対応される方など、人それぞれで観察するのは正直なところ面白いのですが、ここで初めてのパターン。
「いやー、長いですね、お気をつけて」とその車掌さん。個人的にはちょっと承認欲が満たされるのと、温かい声掛けが嬉しくなります。

さて、列車は帯広へ到着。多少乗客が入れ替わり、間髪を入れずに出発。いかにも北海道の田舎といわれてイメージするような十勝の畑の中を駆け抜け、次の駅、下車駅である新得駅へ着きます。

新得駅
新得駅

【16:21発/17:29着】 列車代行バスで東鹿越駅へ

新得からは駅前から出発するバスに乗換えて、富良野方面へと向かいます。というのも、この先の区間は2016年の台風被害により、途中の東鹿越までの列車運行が見合わせとなっているため。また、新得から富良野までの区間は先述の台風被害と復旧費用や今後の維持費用の採算性の観点から、沿線自治体と協議を重ね、実質廃止が決定している状態です。
(2023年6月の公開時点で2024年4月1日の廃止が正式に決定しました)
廃止前にあと何度この区間を乗車できるかわかりません。そのため、一回一回を大切に乗車しようと思います。

代行バス
代行バス

それでは代行バスが新得駅前を出発。新得市街を抜けると、狩勝峠を越えていきます。狩勝峠の景色を見るつもりでいたものの、先ほどのワインによる酔いが醒めきっておらず、結局寝るという失態。。。これで貴重な一回を無駄にしました。「まあ、間違いなくこれが最後にならないから」と心の中で言い聞かせます。最初の「一回一回を大切にする」という意識はこの時点でリオデジャネイロまで吹き飛んでいたのでしょう。

目が覚めた時はすでに狩勝峠の麓にある落合駅付近。この駅は鉄道が来なくなってからホームや線路の草が生え散らかし、自然に還りかけており、鉄道ファン的には”草生えない”状況となっていました。ところが、バス車内から見た感じでは草刈りが行われたのか、積雪のせいか、だいぶさっぱりな印象がありました。廃止は免れませんが、鉄道ファン的には少しは落ち着きが取り戻せるかもしれません。

列車の来ない落合駅
列車の来ない落合駅

次は幾寅駅。南富良野町の中心地にある駅です。有名な映画である「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台となったことで有名です。ここからは高校生3名が乗り込みます。

幾寅駅を出発後、山へ入っていくと代行バスの終点、東鹿越駅へ到着です。

【17:42発/18:22(18:37)着】根室本線の廃止予定区間を通り、富良野へ

東鹿越駅からは列車に乗り換えます。

東鹿越駅は駅前に金山湖と石灰工場しかないところに立地し、鉄道ファンからは秘境駅といわれている駅です。ここから新得駅までの区間が台風被害を受ける前はこの駅が廃止される予定でしたが、台風被害でこの先の線路被害が生じてからは列車とバスの結節点として、活躍をすることになったいわば「奇跡の駅」です。しかし、この区間を含めた富良野までが廃線にあることはほぼ決定なので、結局この駅も消えてしまうことに変わりはなくなるでしょう。

東鹿越駅の駅舎(ホーム側)
東鹿越駅の駅舎(ホーム側)
特別塗装のされたキハ40系気動車
特別塗装のされたキハ40系気動車

富良野行きに乗り換え、東鹿越を出発。車窓右手には時折、金山湖の様子がよく見られます。

金山湖
金山湖

そして、東鹿越から次の駅へ着くでもなく、しばらくすると警笛が長くなったと思うと、列車は急停止。どうやらシカと衝突したようです。野生動物の衝突をめぐっては道東や道北では深刻で、よく列車の遅れの原因になっています。7分遅れで運転再開したものの、次の金山駅で再度車両点検。無事だったようで、約15分遅れで富良野方面へ進みます。

点検をしているうちに外はすっかり暗くなってしまい、もう外は見えず。富良野駅に着く直前で少し市街地の灯りが見えるようになり、約15分遅れで富良野へ到着です。今日の移動距離は343.1km。いやはや、ちょっと疲れました。

富良野駅ホーム
富良野駅ホーム
富良野駅
富良野駅

【19:30着/20:00発】 「くまげら」で和牛ローストビーフ丼を堪能

ホテルにチェックイン後、夕食へ。訪れたのは「くまげら」さんというお店です。ここは富良野名物のオムカレーはじめとした富良野名物料理が食べられる有名店です。駅からも徒歩3分とアクセスも抜群です。店内は和風の装いで広く、カウンターもあるのでおひとり様でも入りやすいです。

今回はお店の看板メニューといわれる「和牛ローストビーフ丼」を注文。さすがにあれだけ昼にワインを飲んだのでビールは控えました。

そして、料理のお出まし。器が大きくインパクトがあります。そして、ご飯にミディアムレアくらいのローストビーフが乗ったシンプルなどんぶりです。
たれもついていますが、既に下味が付いているので、そのままでも行けます。早速一口。肉ではありますが、柔らかく口の中で溶けていくので、刺身を食べているような感覚です。ローストビーフというと歯ごたえのあるイメージがありましたが、その概念を打ち破ってくれるものでした。あっという間に完食しました。

「くまげら」外観
「くまげら」外観
和牛ローストビーフ丼
和牛ローストビーフ丼

それでは本日の旅程はここまで。本日もお疲れ様でした。


【YouTube: 最長片道切符の旅4日目】